この時期になると思い出す。
もう10年になるか…そんなんなるか…
その日ウチには嫁の友達が1人遊びに来ていて、部屋の模様替えをしてたんだ。
一通り事が済み、片付けの際に出た不要な家具や服などをリサイクルショップに売りに行こうって事になって、オレは車にイソイソとそれ等を積み込んだんだ。
夕方近くの4時頃だったかな。
だんだん気温が落ちてきて、太陽の位置も見る見る間に変わっていってた。
ばあさんと愛犬アトムがいつもと変わらず散歩に出掛けた。
それを見送り、オレ達はリサイクルショップへ。
日曜日のリサイクルショップは夕方とはいえ、そこそこ混み合い、買取り査定も少し長めに待たされた。
三人でファミレスに行ける位の金額で売れたのでメシに行こうか?などと話し合ってのがもうすっかり暗くなってた18時過ぎだった。
その時ポケットの中の携帯が鳴った。
オカンからだ。
運転中だった為、嫁に携帯を渡し出てもらった。
おばあさん帰ってこないんだって…
急遽メシに行くのを止め、家に帰るとオカンはじめ、近所の人達が集まっていた。
どーなってんの?
状況を確認するが誰も手掛かりの情報なんてない。
とりあえずみんなで近所を捜索した。
おーい
おばーさーん
狭い町内に響き渡る皆さんの声。
時刻は20時を回り、警察に通報する事にした。
程なくパトカーが3台、村の消防団の人達が駆けつけ捜索にあたった。
一時間程探したが見つからず捜索は一旦中止。
翌朝6時頃に弟から着信。
おばあさん見つかった。
実家に着くとパトカーと消防車と人だかり。
家から徒歩1分の川で見つかった。
土手で栗を拾っていて、なんらかの理由で足を滑らし愛犬もろとも川に落ちたみたいだ。
木に引っかかってたらしい。
上から見ると木の葉が邪魔で見えなかった為発見が遅れたんだ。
昨日散々探した場所じゃん…
オレが呟くとオカンが
おばあさん我慢強くて人の迷惑になる事が嫌だったから…
だから呼びかけた声に反応しなかったのかも…
と、言った。
馬鹿な?とも思ったがばあさんとの性格を考えると納得も出来た。
人だかりをかき分け、腕章を付けた新聞記者が取ってつけたような感情のこもらないしかめっ面で
身内の方ですか?詳しい話聞かせて下さい
と、オレに話かけて来た。
今かよ?このタイミングで聞く?
そう思うと同時に、無神経な質問に腹を立てたオレの表情が強ばって新聞記者に近づこうとした刹那、嫁がオレの襟首を捕まえて
やめろ
嫁の表情で冷静さを取り戻してオレは新聞記者を無視し、ばあさんが運ばれた警察署に向かった。
この方で間違い無いですね?
遺体を保管してる部屋に通され、オカンが遺体を見れないと言うのでオレが確認した。
間違いないです。
そう答え、隣に並べられた遺留品には泥だらけのエプロンともんぺ。
栗が5粒。
栗なんてわざわざ拾わなくても買ってやるよ…
一夜にしてばあさんと愛犬を失ったオレは当分塞ぎ込む事になる。
オレは大事な人を同時に失う事に縁があるらしい。
いらねーよ、そんな縁。
最後まで読んで頂きありがとうございました。

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